2024年8月1日(木)
主張
日銀政策決定会合
政府は利上げへの手だて打て
日本銀行がアベノミクスからの脱却の道を模索しています。30、31日の日銀金融政策決定会合では、政策金利を現在の0~0・1%程度から0・25%程度に引き上げることを決定しました。これまで月6兆円だった国債買い上げは2026年1~3月までに月3兆円程度に減額します。
■国民生活に配慮を
これらの政策は国民生活に影響を与えます。
中小企業の物価高による倒産は1月から6月までで484件と過去最多を大幅に更新しました。物価高騰の背景には、アベノミクス以来続いてきた異常な超低金利による円安があります。超低金利を改めること自体は必要なことです。
一方で、金利の引き上げは、景気を冷え込ませる影響があります。国民生活が苦しいときに、利上げをどう進めていくのかは慎重でなければなりません。
自民党の茂木敏充幹事長や河野太郎デジタル相は、それぞれ円安が過ぎていると日銀に対し利上げを求めていました。しかし、その立場はアベノミクスの押し付けによる経済失政の責任を、反省するのでなく、一方的に日銀にかぶせ、日銀の独立性を脅かすものです。
政策金利の上昇に対応して、中小企業の資金繰りへの援助などの経済対策が必要です。政府はアベノミクスの誤りを認め、利上げへの手だてを打ち、これまでの異常な金融政策からの安定的な脱却をはかるべきです。
■膨れた国債保有額
アベノミクスの「異次元緩和」で、多額の国債買い入れが続けられてきた結果、12年末には90兆円程度だった日銀の国債保有額は、23年末には580兆円程度にまで増加し、国債発行残高の半分を占めるに至っています。
日銀が市場を介さず国債を引き受けることは財政法で原則禁止されています。これまでのような大量の国債購入は事実上の引き受けに近いもので、市場による金利の決定をゆがめ、国の財政規律を損ない、国の借金を野放図に膨らませ、やがて日銀の経営を毀損(きそん)して通貨の安定を危うくすることになりかねません。
日銀が買った国債の代金は、民間銀行が持つ日銀当座預金の口座にたまっています。現在は、日銀がこの当座預金に0・1%の金利を付与していますが、政策金利の引き上げで、この金利も0・25%に引き上げられます。日銀の収支が赤字になるおそれも指摘されています。こうした点からも、買い入れを縮小すること自体は必要です。
日銀が長期国債を大量に買い入れた結果、保有国債の平均残存期間は「異次元緩和」直前の2・5年から最近では7・2年に長期化しています。
このため、仮に国債購入額をただちに月3兆円に減らしたとしても、5年後で400兆円程度、10年後でも300兆円程度の保有国債が残る計算になります。アベノミクスから脱却して金融の正常化をはかるには、かなり長い時間が必要です。
アベノミクスという誤った政策から安定的に脱却するためにも、政府自身が大企業優先の経済政策を暮らし優先に転換することが必要です。