▼SF小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』(ダグラス・アダ

ムス著、安原和見訳)である。間一髪で難を逃れた主人公

は、銀河系を旅する中で謎の数字と出会う。「生命、宇宙、

万物についての究極の疑問の答え」を求められたスーパー

コンピューターが、「42」と示すのである。

 

▼その心は知らない。近い数字は先週、目にした。「彦星」

として知られるアルタイルに向け、昭和58年8月に日本の

研究者がメッセージを発してから40年となる。彦星までは

16・7光年、電波の往復などもろもろの計算だと返事が届

くころらしい。

 

▼地球人の生態や文明レベル、地球上の生命進化の過程など

13種類のデータに対して、異星人からの反応はありや―。

長野県の観測所にある宇宙航空研究開発機構JAXA)の

大型パラボラアンテナを使い、22日夜に電波の観測が行わ

れたという。

 

 

▼胸の高鳴りを覚えつつ、異星人による地球人評が気にもな

る。先の小説では4光年離れた星の役場に、地球破壊の告知

が50年間も張り出されていた。地球人は危機に気づかず、

異星人は「いまごろ文句を言うのは遅すぎる」と告げて引導

を渡した。この四半世紀の地球はどうか。

 

▼争いは絶えることなく、威圧的な外交で世界との亀裂を深

める国が台頭し、気候変動という脅威もある。彦星からの電

波に声あらば…と想像を巡らせる。「遅すぎる」と「まだ間

に合う」。地球人と破局とを隔てる距離は、異星人の目にど

う映っているだろう。