「実現できなければ、岸田文雄政権は終わり。はっきり言って、完全に終わりだ」。自民党の憲法改正推進議員連盟の衛藤征士郎会長は11月30日、断言した。首相が来年9月までの党総裁任期中の実現を目指す憲法改正について、である。強烈な言葉だが、「やるやる詐欺」にうんざりしている国民感情を代弁している。
▼「賛成会派だけで条項案についても検討していくステージに入っていかざるを得ない」。同日の衆院憲法審査会では、公明党の北側一雄副代表が表明した。緊急時の国会議員の任期延長を可能にする改憲条項づくりから、ぐずぐずしたままなら立憲民主党を外すと示唆したのである。これも時宜を得た発言だろう。
▼この日の憲法審では、日本維新の会や国民民主党が自民に対し、審議の加速化を求めた。維新と自民は閉会中審査実施の検討で一致している。一方、参院の憲法審は今国会でまだ1度しか開催されていない。6日に2回目の審査会を開いて今年はおしまいだというからあきれる。
▼内閣府が令和4年11月に実施した世論調査では、自衛隊に「良い印象を持っている」人は90・8%にも上る。そんな現代ではめったに耳にしなくなったが、かつて自衛隊員が「給料ドロボー」呼ばわりされた時代があった。
▼衆参両院に設置されて十数年がたつ憲法審は、これまで何をやってきたのか。本来の仕事である憲法改正原案や改正の発議の審査は、いつになったら始めるのか。内閣府は次回調査では、憲法審に「良い印象」があるか問うといい。
▼憲法は1章を設けて「国会」に関し詳述するものの、「自衛隊」の記述は一切ない。国会議員は給料ドロボーと呼ばれないよう、さっさと自衛隊を明記するがよかろう。