頼れる身寄りのいない高齢者が直面する課題を解決しようと、政府が新制度の検討を始めた。今年度、行政手続きの代行など生前のことから、葬儀や納骨といった死後の対応まで、継続的に支援する取り組みを一部の市町村で試行。全国的な制度化をめざす。▼3面=先行自治体の例
高齢化や単身化などを背景に、病院や施設に入る際の保証人や手続き、葬儀や遺品整理など、家族や親族が担ってきた役割を果たす人がいない高齢者が増え、誰が担うかが課題になっている。提供する民間事業者は増えているが、100万円単位の預かり金が必要なことも多い。頼れる人がいない高齢者はさらに増えるとみられ、厚生労働省は公的支援の仕組みが必要と判断。二つのモデル事業を始める。
一つは、市町村や社会福祉協議会などに相談窓口を設け、「コーディネーター」を配置するもの。日常の困りごと、終活、死後の遺品整理など、様々な相談に乗る。法律相談や終活支援を担う専門職、葬儀・納骨や遺品整理を委任できる業者などとつなぎ、契約手続きを支援する。
ただ、専門職や業者の少ない地域もある。契約には費用もかかる。
もう一つの事業では、市町村の委託、補助を受けた社協などが、介護保険などの手続き代行から金銭管理、緊急連絡先としての受託、死後対応などをパッケージで提供。国による補助で少額でも利用できるようにする。
日本総研の沢村香苗研究員は「身寄りがない高齢者の支援はこれまで受け皿がなく『隙間』と言われており、画期的だ」と評価する。(土肥修一)
■身寄りがない高齢者の困りごと
◆入院時などに頼れる親族がいない
◆認知症になったときのお金の管理が心配
◆遺言を残したい
◆葬儀や納骨をしてくれる人がいない
◆死後の家財の処分はどうすれば
(自治体の相談窓口に寄せられる事例から)