徒然なる儘に ・・・ ⑤

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(社説)トランプ氏指名へ 論戦なき独走の危うさ 2024年3月8日 5時00分

 対立と不安をあおる言説ばかりが勢いづき、理のある異論を凌駕(りょうが)する。米国の伝統保守を自任する政党が健全な姿を保っているのか、疑念が深まった決着である。

 11月の大統領選に向けた共和党の候補選びで、トランプ前大統領の指名が確実になった。開始から2カ月弱で決まるのは異例の早さだ。

 最後まで挑み続けたヘイリー元国連大使を除く候補者は序盤に相次いで撤退し、トランプ氏の独走だった。見応えのある論戦もなく幕を閉じたことは実に残念である。

 その主因は、論議自体を拒むトランプ氏にある。公開の場で政策論を交わす討論会に一度も出ず、もっぱら単独集会で自説を発信。中傷や極論で耳目を集める大衆扇動型の選挙運動を続けている。

 他の候補も「米国第一」の外交や移民対策強化など、大差ない主張が多かった。前回選挙での敗北を認めないトランプ氏の態度は民主主義の否定というべきだが、非難する声は少数にとどまった。

 同盟関係の意義や自由貿易の規範を顧みない主張は、長年の共和党の姿勢から逸脱するものだ。だが、それらをめぐる議論をほぼ置き去りにしたまま、「トランプ党」化の道へと進んでいる。

 トランプ支持層の中心は、保守層に加え、低学歴・低中所得の白人労働者層である。産業構造の変化に伴う格差拡大や、社会の多様化への不満が指摘される。彼らが置かれた構造的な状況を改善する責任を、バイデン大統領も果たしてきたとは言いがたい。

 今回の大統領選は異例ずくめになる。現職と前職の同じ顔合わせの再戦となるだけでなく、トランプ氏は3年前の議会襲撃事件などをめぐる刑事裁判4件を抱えている。

 トランプ氏側は大統領公務中の行為は刑事免責されると主張し、議会襲撃で服役中の支持者らを恩赦する考えも公言。国民統合に背を向け、支持層にのみ報いる強権志向を隠そうともしない。

 ペンス前副大統領は選挙戦のなかで議会襲撃事件を振り返り、「だれであれ憲法の上に立とうとする者に大統領の資格はない」と断じた。こんなまっとうな意見が新鮮味をもって響くほど、いまの米政治の病は深い。

 大統領選はまだ始まったばかりだ。これから副大統領選び、共和・民主の党大会、候補者討論会などが続く。ライバル政党の中傷に終始して政治不信の連鎖を深めるのではなく、分断政治がいかに米国の利益と信用を損ねてきたか、足元を見つめた理性的な論議を求めたい。