「バイちゃ~」。代表作の一つ、『Dr.スランプ』の主人公、アラレちゃんの別れの挨拶が聞こえる気がした。一時代を画した漫画家、鳥山明さんの突然の死去は、日本のみならず世界各国で大きく報じられ、その影響力と存在感の大きさをまざまざと見せつけている。
▼少年少女時代、鳥山作品に初めて触れたときの驚きと、作品世界に引き込まれるような感覚を覚えている人は少なくないだろう。斬新なギャグに腹を抱え、見たことのない大冒険に胸躍った記憶は、その後の人生を形作る大事な財産となる。
▼政治家のX(旧ツイッター)でもこんな投稿が目についた。「小さい頃、鳥山先生の作品に出会えたから人生の道標の光を消さずに生きてこられました」(自民党の小野田紀美前防衛政務官)、「少年時代の思い出は鳥山明先生の作品とともにあります」(国民民主党の玉木雄一郎代表)。
▼また、無所属の松原仁元拉致問題担当相は「ドラゴンボールなくしてクールジャパンは語れません」と惜しんでいた。海外市場を日本のアニメーションが席巻する今日があるのも、鳥山さんの人気作『ドラゴンボール』が大きな役割を果たした。
▼多趣味だった安倍晋三元首相も、秘書が漫画文化をくさすと「漫画をばかにしてはいけない」とたしなめたと聞く。自民党の麻生太郎副総裁がかなりの漫画好きであることは、広く知られている。
▼鳥山さんは既に2019年には芸術、文学領域での創造と、世界での普及に傑出した功績のあった人物に授与されるフランス芸術文化勲章シュバリエを受章しており、日本は出遅れている。岸田文雄首相は、漫画家としては『サザエさん』の長谷川町子さんに続く国民栄誉賞を授与してはどうか。