第三次世界大戦の勃発は絶対に避けよ 見えぬ岸田首相の存在感 松井一郎 2023/10/22 09:00

１５日、イスラエルによる攻撃後、パレスチナ自治区ガザに上る煙（ＡＰ＝共同）

イスラム原理主義組織ハマスによるイスラエルへの大規模テロ攻撃と、イスラエル軍による反撃で、双方で４０００人を超える死者が出ている。実に痛ましい事態だ。

まず、ハマスがイスラエルに対して飽和的なロケット弾攻撃や、戦闘員による無差別テロを強行し、女性や子供、老人らを人質として拉致したことは、決して許すことのできない蛮行である。欧米諸国も、イスラエルによる自衛権行使を支持した。ハマスは即刻、テロ行為を止めて、人質を解放しなければならない。

ただ、ハマスが一般のパレスチナ住民を「人間の盾」にしていることもあり、実効支配するパレスチナ自治区ガザの住民の犠牲が増えていることも看過できない。

イスラエル軍は今後、ガザでのテロ掃討作戦を実行するため、一般のパレスチナ住民のガザ南部への避難を呼びかけているが、ハマスとパレスチナ住民を明確に区別することは困難だ。今後、民間人の犠牲が増えれば、どちらにも正義は無くなりかねない。

バラク・オバマ米大統領が２０１３年、「米国は世界の警察官ではない」と演説してから、国際社会における米国の影響力は低下した。ロシアはウクライナを侵略し、中国の覇権拡大が進み、中東ではイスラム原理主義組織が跋扈（ばっこ）し、背後にイランの存在が指摘されている。

このまま放置すれば、第三次世界大戦が勃発しかねない様相だ。万が一、核戦争などが起きれば、世界中で想像を絶する犠牲者が出かねない。そこには勝者はいない。Ｇ７（先進７カ国）だけでなく、ＢＲＩＣｓ（有力新興５カ国）の首脳も、冷静になって共存する道を探るべきだ。Ｇ７議長である岸田文雄首相の存在感が見えないのが、残念でならない。