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ナチスによる遺失品絵画、日本で発見 あの作品も訴訟の渦中に… 岩田恵実2023年11月18日 12時00分

 第2次世界大戦中にナチスドイツによって略奪、接収された美術品の返還を求める動きが、欧米を中心に増えている。背景にあるのが、美術品を判定する技術の進歩だ。日本で事情を知らずに所有していた美術品が返還対象とみなされる例も出てきた。無償で返還した例もあるが、交渉がうまくいかず訴訟になるケースも起きている。

 「これほど遠い日本で見つかるとは思いませんでした」

 ポーランド文化・国家遺産省文化財登録局長で、美術品の返還事業を担当するエルジビエタ・ロゴフスカさんは驚きを隠さなかった。第2次世界大戦中にポーランドからナチスによって持ち出され、遺失品となっていた16~17世紀の絵画「聖母子」が昨年、日本で見つかった。ポーランドのこうした遺失品が日本で見つかるのは初めてという。

 この絵は宗教画で有名なイタリア人画家・アレッサンドロ・トゥルキ(1578~1649)の作で、文章記録などから1820年代には、ポーランド南部の邸宅の壁に飾られていたとされる。しかし1939年にドイツがポーランドに侵攻。戦渦の中で、ナチスの手に渡った後、行方がわからなくなっていた。

遺失品の見つけ方とは

 事態が動いたのは昨年1月。日本で非常によく似た作品がネットオークションにかけられているのを、ポーランド文化・国家遺産省の職員が見つけた。

 第2次世界大戦中、ナチスの影響下で行方がわからなくなった美術品は世界で10万点とも100万点ともいわれる。ヒトラーの個人的なコレクションになったり、売却されて戦争の資金になったりした。モダンアートなどは「退廃芸術」の烙印(らくいん)を押され破棄されることもあった。

 中でも被害が多かったポーランドは90年代から、損失した品の情報を集めてデータベース化し、返還を求めてきた。

 担当職員らはデータベースに登録された6万6千点以上の作品が競売にかけられていないか、絶えず監視している。オンライン上の膨大な絵画などの画像から、該当する可能性があるものを半自動的に抽出するシステムも利用。こうした技術は日々向上しており、担当者は「今ほど遺失品が見つかる時代はない」という。

 90年代に返還されたのはわずか数点だったが、2016年以降、ポーランドは戦後に盗難に遭った作品を含め計約600点を取り返した。現在は15カ国で150件の返還手続き中だ。

 その中でも「聖母子」の返還は「模範的」だったと担当者らは振り返る。日本人の所有者と交渉の末、無償でポーランド側に返されたことが評価の理由の一つだ。美術品の返還をめぐっては、これまで元所有者と現所有者間で多くの訴訟やトラブルが起きてきた。

あの作品も渦中に

 ナチスの戦後賠償に詳しい学習院女子大の武井彩佳教授は、所有をめぐり特に問題になってきたのは、「ナチスの圧力のもとで取引された作品だ」と指摘する。ユダヤ人ナチスの迫害から逃れるため、作品を売らざるを得ない状況に追い込まれて手放したなどのケースだ。

 しかし現在では、迫害という大きな圧力のもとで取引された作品は、「元所有者側に返すべき」との考えが主流になってきているという。きっかけは1998年の国際会議で、ナチス略奪品の調査・返還などに関する「ワシントン原則」に44カ国が合意し、返還の機運が高まったことだ。

 日本はこの会議に参加しておらず、絵画の来歴に対する問題意識は決して高くない。ただ日本でもトラブルになるケースが起きている。そのうちの一つが、SOMPOホールディングスのグループ会社が所有するゴッホの絵画「ひまわり」だ。

 昨年、元所有者の遺族が、ナチスの圧力のもとで「ひまわり」を売却させられたとして、現所有者の同社側を提訴。返還や損害賠償を求めている。一方で、SOMPO側は公開の競売で購入し、「所有権の正当性について疑いの余地はない」とし、訴えの却下を申し立てている。

 「ひまわり」は1987年当時、絵画史上最高額の53億円で落札され、現在も東京都新宿区の「SOMPO美術館」で展示されている。武井教授は「欧米ではこうした事情のある作品が美術館で飾られることが難しくなっている」といい、裁判になった場合、作品の展示による入場料などの収益が不当利得と見なされないか、懸念を示す。

 一方で提訴した側が元所有者から世代の離れた子孫らであることについて、「請求できる対象をどこかで区切らないと所有権が安定しない」とも指摘する。(岩田恵実)