徒然なる儘に ・・・ ⑤

心機一転、新たにブログ再開です💕 雑談を書くことも多いですけれど・・・(主に、電子ゲーム・ネタ💕)、残りは【新聞記事】にコメントを入れています💕

(フォーラム)子どもに伝える戦争:2 大人の責務 2024年8月4日 5時00分

 世界の紛争地で平和維持に尽力したり、戦争を記録する施設で歴史の教訓を伝えたりしている人たちがいます。いま、どんな思いで仕事に向き合っているのでしょうか。子どもに戦争を伝えることについてどのように考えたらいいか、ヒントを語ってもらいました。

 

 ■衝撃も大事、対話し苦しみに寄り添う心を 国際連合事務次長・軍縮担当上級代表、中満泉さん

 ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃など、世界各地で戦乱が続いています。子どもたちに、どんな世界を引き継ぐか。国際連合事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉さんは「諦めてはいけない」と話します。

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 21世紀にこんなひどいことが起きるとは、私たちも想定していませんでした。国連の職員も非力、無力で、歯がゆさを通り越して、怒りに近い気持ちもあります。現場には、命の危険にさらされながら活動をしている同僚もたくさんいます。本当に私も苦しい。

 20代の娘たちからはよく「こんなひどい世界を、そのまま私たちの世代にバトンタッチされては困る」と言われます。時間はかかりますが、解決策を探っていくしかないと思っています。

 いま日本にも世界にも、社会のいろんなところで不公平・不平等があります。どうしたら変えられるのか。自分たちの生活と結びつけて考えることから、平和はつくられるのではないかと思います。

 戦争に関しては、理解するだけでなく、「衝撃的に感じる」ということも重要ではないでしょうか。私も、小4で初めて長崎の原爆資料室(当時)で見た展示を今でも鮮明に覚えています。子どもたちの焼けただれた体などの写真は、衝撃でもあり恐ろしくもありました。心の根っこに「この世界でこんなことがあって良いはずがない」と深く刻み込まれました。

 もちろん心のケアをしながら、「触れておしまい」ではなく、そのあとに先生や大人が対話をすることが大切です。

 加えて、小さいときから、地理的には離れた場所でも同じ年代の子が戦争で苦しんでいることを知ることがなければ、大人になっても心を寄せることはできないのではないでしょうか。

 例えば、街でホームレスの人を見かけたときに「汚い、嫌だ」と避ける子になるのか。「どうしてホームレスになったのか」と思いをはせ、自分には何ができるだろうと考えられる子に育つのか。周りの大人の考え方次第ですよね。

 心を寄せるというのは、どうやったら、もう一度望むような生活に引き戻すことができるのかを考えることだと思います。

 特に子どもを育てている人には、人一倍責任がある。誰も取り残さずみんなで幸せになるにはどうしたらいいのか、考える種をまくのが「子育ての意味」でもあります。諦めてはいけないと常に思っています。

 人が変われば、世界も必ず、少しずつ変わります。歴史をさかのぼると、200年ほど前までは奴隷貿易が合法的な経済活動でした。

 奴隷貿易が廃止されたあとは、戦時の行きすぎた非人道的な行為を制限するために国際人道法がつくられ、人権の考えから法律が整備されてきました。長い視点でみると、人類社会は進歩しています。私たちは、それをさらに進めなければいけません。

 世の中の制度は、一番弱い立場の人を中心に設計していけばいい。強い人は自分たちで工夫して生き残っていきます。

 どんな社会をつくっていくのかについて対話し、将来的に子どもたち一人一人が行動していくことが大切です。

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 なかみつ・いずみ 早大法学部卒業、米ジョージタウン大学大学院修了。1989年に国連難民高等弁務官事務所UNHCR)に入所し、イラク北部などで勤務。国連平和維持活動(PKO)局で政策・評価・訓練部長などを経て2017年5月より現職。

 

 ■本質をつかむには、背景が理解できる年齢で アウシュビッツ公認ガイド・中谷剛さん

 ユダヤ人ら約110万人が虐殺されたナチス・ドイツの「アウシュビッツ強制収容所」。世界中の人々が訪れますが、14歳未満の入場は推奨されていません。子どもが戦争の歴史を知ることについて、どう考えたらいいのか。強制収容所内にある博物館で20年以上ガイドを務める中谷剛さんに話を聞きました。

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 14歳を区切りとしているのは、子どもたちにショックを与えてはいけないという配慮に加えて、ここで起きたことをまだ理解しがたい年齢ということも理由にあるのではないでしょうか。

 ポーランドでは、歴史として第2次世界大戦について学ぶのは高校2年生です。学んでいないうちに訪れるのは早い、ということなのだろうと思います。

 これは私の個人的な意見ですが、幼いころは肌の色、宗教、政治、文化の違いなどで相手や友達を選んだりはしません。相手を好きになって仲良くなるのも早いですし、心の壁が低い。アウシュビッツで起きたことを本質的には理解できないと思います。

 「この場所で、どのようにして、何人亡くなった」と伝えることはできます。それも重要なことではありますが、博物館は「二度と繰り返してはいけない」ということを教訓にしている。人種・民族差別や、障害者、性的少数者への差別などの延長線上にアウシュビッツがあったわけです。

 他者との競争が始まり、自我が芽生えて自分と他人を分け始めるくらいの年齢になってからでないと、そんな背景まで理解するのは難しいのではないでしょうか。

 何をするにしても、通常、子どもに選択の余地はないことが多いですから、大人はより一層考えなくてはいけないと思います。

 ガイドは、歴史を伝えるのが役割です。それは、「こうすれば起きない」と教えることではなく、どうしたらいいのかを考えてもらうための歴史の伝達であり、材料の提供なのだと思っています。

 私たち一人一人が考えて行動しなければいけません。誰を相手にしても心を開いてもらえるような内容にしなければいけない。毎回少しずつ伝え方を変え、工夫しています。

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 なかたに・たけし 1966年生まれ。栃木県足利市で育ち、91年からポーランドに居住。97年、アウシュビッツ・ビルケナウ博物館の公認ガイドの資格を取得。著書に「ホロコーストを次世代に伝える」(岩波書店)など。

 

 ■家族が関心持っているか/幼いと現実感がない

 アンケートでは、子どもが戦争や平和を学ぶことについて、家族や身近な大人、学校に期待する回答が多く寄せられました。結果はhttps://www.asahi.com/opinion/forum/205/で読むことができます。

 

 ●当たり前ではない平和 国とか軍隊などの理屈を理解できるのは小学生からだとしても、こんなつらいことを私たちの国も過去に起こして、今もあちこちで起きていて、平和が当たり前ではないということを絵本などで知るのは未就学児でもいいと思います。(千葉、女性、50代)

 ●親の無関心が影響 親が戦争や平和についてのニュースに関心がないと、子どもは知ることすらできない。そうして、戦争の悲惨さや平和の尊さについて無頓着な大人が増えているのだと思う。大切なのは伝える年齢ではなく、子どもが家族と戦争や平和について意見する機会である。(兵庫、男性、30代)

 ●ずっと考えていくもの 自分の国の平和が当たり前ではなく、努力の上にあることを考えていく、伝えていく必要があると思っています。戦争をしてどうなったか、これからどうするのか、人間としてずっと考えていくものだと。(静岡、女性、50代)

 ●幼い時に知る意味ない 子どもの頃の感じ方と大人になってからの感じ方は違う。幼い時に戦争の話をしても、怖いと思ったり、現実離れしすぎていて「だから何?」と感じたりもして、幼い時に知る意味がないと思います。(北海道、女性、40代)

 ●身近な人の死 戦争は身近な人の死に関わることだという理解が大切。自分は4歳の時に父を亡くし、小1の時に死を考えて眠れなくなり、考えるのをやめた。全ての戦争で亡くなる人には、みんな身近な人がいて、同じように悲しむと教えることができたらいい。(千葉、男性、50代)

 ●戦場の現実を想像して 武器・兵器を人がどのような目的でどのように使用し、人にどのような影響をもたらすかを想像してほしい。ニュースなどで戦場で戦う人々を見るときに、実際に家族や自分をその場に置いて同じ気持ちでいられるか考える機会を持ってほしい。(愛知、男性、60代)

 

 ■《取材後記》正解ない問い、考え続ける

 ここ数年、ウクライナ侵攻やガザの戦闘など、衝撃的と感じる出来事が相次いだ。そのたび記者として、一市民としてできることを考え、行動したけれど、役に立てないことがずっと心苦しかった。一方で、戦闘そのものを止めることはできなくても、自分にできることを自分なりの方法で社会に還元している方々に取材で出会い、勇気づけられた。

 次世代を担う子どもたちに、どんな社会を手渡せるか。過去の戦争の教訓から何を見いだせるか。中満さん、中谷さんの言葉から「大人の責任」を痛感している。

 正解のない問いを一緒に考えて下さった読者や識者のみなさんと、これからも模索し続けたい。(大坪実佳子)

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 おおつぼ・みかこ 大分県出身、2012年入社。くらし報道部で主に「食」「子ども」分野を担当。基本的人権が守られる社会で生きたい。そのためにどんな情報を発信できるか、問い続けている。

 

 ◇大坪実佳子が担当しました。

 

 ◇アンケート「早期退職は得か損か あなたは70歳まで働く?」をhttps://www.asahi.com/opinion/forum/で募集しています。

 

 ◇8月11日、18日は休載し、次回25日は「女性の進学とキャリア」を掲載します。