能登半島地震の被害の甚大さは、いまだその全容が見通せない。倒壊した家屋の下にはまだ人がいる。救援は十分には届いていない。孤立した集落も残っている。困窮と寒さのなか、助け合う被災者たちの言葉に、胸が震える
▼「利用者の命が危ない」。高齢者施設の職員の男性は4日、輪島市の県道で助けを求めていた。地元紙、北国新聞が伝えた光景だ。男性の自宅も流されたが、入居者の世話を続けているという。車を止めたドライバーがペットボトルの水2本を差し出した。「これくらいしかできないけど」
▼きのう同僚の記者がこの施設に電話すると、別の職員が教えてくれた。報道を見て、「昔、家族が世話になった」という人や、名前も言わない人が灯油を持ち寄ってくれたそうだ。電気もなく、水も出ないが、これで何とか暖がとれる。「ありがたい。人の温かさを感じました」
▼1300年の歴史を持つ重蔵神社の禰宜(ねぎ)、能門(のと)亜由子さんは、近所の人と一緒におにぎりを作り、配っていた。神社は損壊したが、「過去の水害でも、祖先は炊き出しをしていた。日頃みなさんに助けてもらっているから、お互い様です」
禰宜とはどんな職業ですか?
▼4日に再開したスーパーマーケットでは大道豊春さんが「少しでもお客さんの役に立ちたい」。商品の多くは100円だ。「利益を上げることは、後で考えればいい」
▼おおぜいの人々が誰かのために歯を食いしばり、力を尽くしている。それでも、被害の大きさに間に合わない現状が、やるせない。