自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で失われた国民の信頼を取り戻し、山積する諸課題に答えを出さねばならない。岸田政権のみならず、与野党の国会議員すべてが重い責任を負っていることを自覚し、「政治の危機」の打開に全力をあげてもらいたい。
会期150日間の通常国会は、異例の幕開けとなった。通例では初日に行われる首相の施政方針演説は、週明けの衆参予算委員会での「政治とカネ」の集中審議の後に回された。自民党はまた、組織的な裏金づくりをしていた安倍派に属する衆参両院の委員長ら11人を交代させた。
岸田首相はこれまで、国民の信頼なくして、政治の安定も政策の推進もないと繰り返してきた。裏金の実態をつまびらかにすることが、論戦の出発点であることは明らかだ。安倍派の幹部ら関係者に、政治倫理審査会や予算委での証人喚問で説明責任を果たさせるべきだ。
政治倫理審査会
政治倫理審査会は、政治倫理の確立のため、議員が「行為規範」その他の法令の規定に著しく違反し、政治的道義的に責任があると認めるかどうかについて審査し、適当な勧告を行う機関です。
本審査会は、国会法に基づき、第104回国会の昭和60年12月から設置されています。
その上で、政治資金の流れをガラス張りにする制度改正の実現が不可欠だ。すでに野党各党からは、パーティーの規制強化や透明性の拡大、会計責任者が有罪なら議員にも責任が及ぶ連座制の導入、政策活動費や調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などの提案がなされている。与党公明党も賛同している改革も少なくない。
自民党が国会開会前に駆け込みでまとめた党改革の「中間とりまとめ」は、政治資金規正法の改正こそ掲げたが、具体的な内容には一切触れていない。速やかに政治刷新本部の議論を再開し、党の案をまとめたうえで、野党と真摯(しんし)に協議する必要がある。
今年は「平成の政治改革」から30年の節目にあたる。政治をゆがめかねない企業・団体献金をなくす代わりに、税金が原資の政党交付金を導入したはずが、政党向けは温存され、パーティー券の購入という抜け道も残った。改革の原点に立ち返った議論に、自民党も応じるべきだ。
政党交付金(せいとうこうふきん)とは、政党の活動を助成する目的で国庫から交付される資金。 日本においては政党助成法に基づいて一定の要件を満たした政党に交付される。 なお、政党が政党要件を満たさなくなっても政治団体として存続する場合には、政党であった期間に応じて交付金が交付される。
国会での議論が求められるテーマは「政治改革」にとどまらない。能登半島地震の被災者支援や復旧・復興、初動を含む対応の検証は言うに及ばず、歳出総額112兆円超と、借金頼みで過去2番目の規模にふくれあがった新年度予算案は、徹底して吟味されなければならない。
政府が昨年末、「防衛装備移転三原則」などを改定し、殺傷兵器の輸出に道を開いたことも見過ごせない。政権が開かれた国民的議論抜きに推し進める施策を、俎上(そじょう)に載せるのも国会の責務だ。