徒然なる儘に ・・・ ⑤

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(インタビュー)「消滅可能性都市」10年 人口戦略会議副議長・増田寛也さん 2024年2月21日 5時00分

 ■8がけ社会×インタビュー

 2040年までに、市町村の半分が「消滅」の可能性に直面する――。民間研究機関が、そんな予測=キーワード=で少子化対策が急務と提言してから10年が経った。だが、人口減の勢いは止まらず、この国の未来像は今もかすんでいる。何に失敗したのか。今からできることは。提言を主導した増田寛也さんに聞いた。

 

 ――人口減少に本格的に危機感を抱いたきっかけは。

 「岩手県知事を2007年まで12年間務めたとき、人口減を肌で感じました。小学校の統廃合や、成人式の出席者減少といった話をよく聞きましたし、農業や漁業で多くの外国人が働くようになっていた。しかし、まだ当時は国全体では人口が増えていたので、多くの人はあまり気にとめていませんでした。知事を辞めた翌年の08年が、日本の人口のピークでした」

 「だから在任中の全国知事会でも、人口減を議論した記憶はありません。私は、岩手県の歴代知事で初めて人口減を前提に長期計画を作ったのですが、議会で『弱気になるな』と怒られました。県人口は戦後ピーク時は約145万人でしたが、今は120万人を切っています」

 ――なぜ、当時は関心が薄かったのでしょうか。

 「国立社会保障・人口問題研究所は、以前から市町村別の将来推計人口を発表しています。就学児の将来人口を見れば、多くの自治体で小学校を統廃合せざるを得ないことは明らかだったのに、私の記憶では、このデータを有効に使っていた市町村長はほとんどいません。人口は増えるものであり、頑張れば出生率は上げられる、という思い込みが強かったのでしょう。『産めよ増やせよ』という戦前の国家政策の記憶が残っており、人口増を目指す政策がタブー視されてきた面もあります」

 ――増田さんが座長だった日本創成会議の14年の提言を受けて、国が「地方創生」政策を打ち出した後も、地方は縮み続けています。

 「第2次安倍政権石破茂さんが地方創生相となって予算をつけたのはよかったのですが、人口減対策を盛り込んだビジョンと総合戦略づくりを自治体に求めたことで、地域間競争になってしまった。議会による検証にたえるため、自治体が短期的に成果を出そうとすれば、対症療法的に他地域からの移住者を増やす『社会増』を狙うことになる。自治体同士が人口の奪い合いをしても、全国で考えれば無意味ですから、むしろ近隣と広く協力して取り組む視点が必要でした」

 「『まち・ひと・しごと創生』『一億総活躍』など、看板は毎年のように変わったものの、やらないよりやった方がよかったのは間違いありません。ただ、何年か経って担当者が変わるとルーティン化し、形式的になる。成功例をまねすれば国からの交付金が取れると考えた自治体が、東京のコンサルタントと契約して計画づくりをしているのも随分目にしました。名前は違っても中身はほぼ同じ、という金太郎アメになってしまった」

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 ――生まれる子どもを増やす「自然増」対策のあり方は。

 「やはり国が責任を持ってやらないと駄目でしょう。少子化対策は、身近な自治体がやると、上から目線の押しつけだと反発を受けやすい。例えば婚活イベントも、自治体が主催すると参加しにくいものです」

 「しかし国は、地方創生と子ども・子育ての担当部署を、途中で切り離しました。国の担当が変わったことで、自治体側にも、地方創生と子育ての予算や担当部局が別になるなどの変化が生じたように感じました。これで、果たして有効な手が打てたのか。人口減は、自然減と社会減が合わさって生じるわけだから、同じ考え方で取り組まなければいけないはずです」

 「岸田政権は『異次元の少子化対策』を打ち出しましたが、内容は別として、同じくらいの規模の政策をもっと早く打ち出すべきでした。例えばドイツでは15年ほど前、現EU(欧州連合欧州委員長フォンデアライエン氏が少子化の担当大臣だった時期に、若者世代が仕事と子育てを両立しやすくする抜本的な政策を採り、出生率が急上昇しました」

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 ――14年の提言では、若年女性が減る自治体を「消滅可能性都市」と名指ししましたね。

 「若い女性が減ると社会減になるだけではなく、子どもを産む人が減るので自然減も進み、ダブルで効いてきます。例えば東北では、若年女性の多くが仙台や東京に出ていってしまう。男性の場合、進学や就職で転出しても30代以降に戻る人も少なくないのですが、女性はほとんど戻りません」

 「女性の働き口の選択肢が圧倒的に都会の方が多いことに加え、アンケートなどでは、地方の閉塞(へいそく)感を訴える女性が多いのです。東京は給与水準が高くても家賃や食費がかさむため、可処分所得では、必ずしも地方が不利ではない。それでも多くの女性が故郷に戻らない理由を考える必要があります」

 ――東京は、人を吸い込んで出生率を下げるブラックホールだと表現しています。

 「通勤時間が長く、子育ての環境もいいとは言えない東京に人が集まると人口減が進んでしまうので、なるべく地方で頑張りましょうと呼びかけたわけです。しかし、結果として東京一極集中は止まっていない。もう東京が本気を出して出生率を上げないと、国全体として効果が出ない段階になっています」

 ――そこでカギになるのは、働き方でしょうか。

 「これを言うと大人の男はみんな下を向くのですが、男性の家事や育児への参加度が高まるほど、2人目以降の子につながるという調査結果があります。職場は、育休を長く取った人ほど高い評価をつけるべきだ、という意見すらある。結婚・出産・子育てに優しい企業かどうかを『見える化』し、就職活動をする若い人たちも情報を得られるようにする、といった改革が必要です」

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 ――民間の有識者からなり、副議長を務める人口戦略会議が1月に出した提言では、2100年に人口を8千万人で安定化させることを目標としました。出生率を上げるためには、何が最も重要でしょうか。

 「人口問題について、お茶の水女子大学の学生と話をする機会がありました。彼女たちは、子どもを持つことはリスクだと考えていました。子どもを幸せにできるのか。教育費はどれだけかかるのか。自分のキャリア形成の時間が奪われるのでは。実に多くの懸念を感じていた。そんなリスクを、まずは全て除去しなくてはいけない。その上で、仕事をしながら子育てをすることはハンディやリスクではなく幸せなことなのだと、分かってほしいと感じました」

 「これまでの政策決定者は、普通の市民、特に若い人たちとのコミュニケーションが不足していたのではないかと思います。決定的な世代間の意識ギャップがあったのではないか。若い女性の声を拾い、政策に結びつける。政府は、そこを欠かさずにやってほしいと思います」

 ――具体的には、何をしていくべきだと考えますか。

 「キャリアの問題で言えば、日本固有の新卒一括採用・年功序列終身雇用というメンバーシップ型のモデルは、崩していく必要がある。いま欧米的なジョブ型の雇用形態に変えていくべきだという議論が起きていますが、メンバーシップから外れた非正規雇用の問題の解決は、出生率にも関わるからです」

 「住居についても、東京23区内は非常に不動産価格が高く、若い人たちが高額なローンを背負ったり、郊外に住んで長時間通勤をしたりしている。働き方にも住環境にも総合的に取り組まなければ、どうにもなりません。やはり国が司令塔になって目配りしなければ、自治体だけでは難しい。若年人口がさらに急激に減少する2030年ごろが挽回(ばんかい)のラストチャンスだと言っていますが、遅れれば遅れるほど厳しくなる。いまが最後のチャンスだと考えた方がいい」

 ――この先、仮に出生率が上昇しても、2040年に現役世代の人口が今の8割に減る社会の到来は、もう避けられません。

 「確かに人口増の努力は、かなり先にならないと効いてこない。一方で、人口減社会への適応は今後、少なくとも2100年ごろまではやり続けないといけない。どちらも、取り組みが遅くなるほど困難さが増します。これから数十年ほどが、最も苦しい時代になるでしょう」

 「その厳しい時期を切り抜ければ、次第に若い世代が増えて高齢化リスクも下がり、人口減が穏やかになって定常化に向かう。そこを目指していくしかありません」

 (聞き手・奈良部健真鍋弘樹

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 ますだひろや 1951年生まれ。旧建設省を退職後、95年から岩手県知事3期。2007~08年に総務相。20年から日本郵政社長、23年から有識者でつくる人口戦略会議に参加。

 

 ◆キーワード

 <「消滅可能性都市」の予測> 民間研究機関の日本創成会議が2014年、全国の約半数の自治体で、40年には20~39歳の女性が10年比で半分以下に減ると試算した。出産年齢の中心世代が半減した自治体は、人口減少に歯止めがかからない「消滅可能性都市」になると指摘。東京一極集中の是正や出生率アップなどの対策の必要性を訴えた。