徒然なる儘に ・・・ ⑤

心機一転、新たにブログ再開です💕 雑談を書くことも多いですけれど・・・(主に、電子ゲーム・ネタ💕)、残りは【新聞記事】にコメントを入れています💕

アラレと悟空に実は抵抗、そして歴史変えた 鳥山明さんが徹した娯楽 2024年3月9日 5時00分

「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」などの作品で知られる漫画家の鳥山明(とりやま・あきら)さんが1日、急性硬膜下血腫のため死去した。68歳だった。

 「ドラゴンボール」の悟空は世界中で熱く愛される「MANGA」「ANIME」の偉大なアイコンだ。悲報は瞬くうちに世界を駆けめぐった。

 敵も仲間も個性豊かに描き分け、闘いは宇宙的スケール。天をゆく雲に乗った「天才」に見えるが、仕事への姿勢はプロ意識の高い合理主義者だ。締め切りを絶対守るのは広告会社勤めの経験から。漫画は「誰にでも分かりやすく」が第一。会社を辞め1年ほどぶらぶらしていたとき漫画賞に応募したのは「賞金狙い」で、ギャグものにしたのは枚数が少なくて済むから。

 当時「週刊少年ジャンプ」編集者だった鳥嶋和彦さんが選外の原稿の山から鳥山さんに目をつけた理由は「擬音の描き文字がきれい」。グラフィックデザインの経験とセンスのたまものだが、この出会いが漫画の歴史を変えた。

 初連載「Dr.スランプ」は血と汗と涙の「男」くさいジャンプに、洗練されたデザインセンス、ポップなギャグ、ファンタジーとファミリー路線を持ち込んだ。翌年にはアニメ化され、高視聴率をたたき出す。主人公のロボット少女アラレちゃんの「んちゃ!」や「ほよよ」は流行語となった。

 実は、アラレを作った発明家則巻千兵衛が主人公で、アラレ登場は1話限りのはずだった。2話の下書きを見て驚いた鳥嶋さんが「この面白い女の子を主人公に」。鳥山さんは「女の子の主人公は嫌だ」と抵抗したが、押し切られた。

 「ドラゴンボール」も最初は抵抗した。新連載の構想が行き詰まっていた時のこと、ジャッキー・チェン作品を仕事中に流し見していると聞いた鳥嶋さんがカンフー漫画を提案。しかし「格闘ものは苦手」「悪いやつが描けない」と鳥山さんは嫌がった。

 実際、開始当初の「ドラゴンボール」はギャグとファンタジー色が濃かった。スピーディーなアクションにシフトしたのは、読者アンケートの結果が振るわずテコ入れのため。悟空は強さを追求するシンプルなキャラとなり、悪役もパワーアップ。更に、柔らかな描線を角張って勢いのあるものに自ら“改造”した。

 両作を「好みかと言ったらぜんぜん自分の好みじゃない」と振り返った。「戦闘シーンより、くだらない笑いを描いている方が、ずっと好き」「好みなのは地味目で軽い内容」とも。

 その「好み」が味わえるのが「ドラゴンボール」終了後の2000年に描いた単行本全1巻の「SAND LAND」。趣味性全開、渋いオヤジらがレトロな戦車を操り砂漠で冒険する。昨年アニメ映画化され好評を博し、「再発見」という形で「鳥山ワールド」の新たな扉が開いた。

 その新シリーズが20日から世界で配信され、鳥山さん考案の新たな物語を基にしたパートがあるという。突然の喪失を嘆くファンに、思わぬ「置き土産」となった。「ドラゴンボール」も新作が作られ続けるだろう。強さを求める悟空の旅に終わりはない。

 「僕の漫画の役目は、娯楽に徹することだと思っています。ひと時楽しい時間を過ごしてもらえれば何も残らなくてもいいとさえ思っています」

 プロに徹した男の残したものの大きさを、いま世界がかみしめている。小原篤