徒然なる儘に ・・・ ⑤

心機一転、新たにブログ再開です💕 雑談を書くことも多いですけれど・・・(主に、電子ゲーム・ネタ💕)、残りは【新聞記事】にコメントを入れています💕

「トランプべた褒め」文芸春秋に何があった? 論壇時評4月号 産経新聞プレミアム特任編集長・菅原慎太郎

米大統領選の共和党候補指名を確実にしたトランプ (ロイター=共同)

少し前から「もしトラ」という言葉をマスコミ、論壇でもよく目にするようになった。もし米国大統領にあの悪名高い前大統領、トランプが返り咲いたら、世界も日本も大変なことになる―と今頃、慌てているのだ。最近では次期大統領選はトランプ勝利でほぼ確実なのではないかという観測も強まり、「ほぼトラ」などともいう。

「もし」でも「ほぼ」でもどちらでもいいが、要するに「トランプに大統領になってほしくない」というのが、少なくとも日本の論壇でも主流である。右派・保守論壇ではトランプを評価する論客も結構いるが、彼が米国で反左翼(反リベラルと言ってもいい)の中心的人物となっていることもあって、左派はおおむね反トランプだ。

そんな中、月刊誌の雄「文芸春秋が、「トランプ氏に勝ってほしい」と掲げる米国共和党の前国務長官マイク・ポンペオのインタビュー記事を特集トップで掲載した。近年、左傾化が著しいという評価が論壇では定着している文芸春秋だが、一体、どうしてしまったのか。しかも、インタビューの聞き手、北村滋は同誌が批判し続けた安倍政権で国家安全保障局長まで務めた人物。左傾路線はどこへ行った…と書くと、同誌を批判しているようだが、そうではない。褒めている。なにしろ、ポンペオの話は率直だ。

「米国の世界的なハイテク企業ほど、中国の軍事力と警察国家の強化に加担した業界は他にありません」

「トランプ政権が経済的な強硬措置を取ることで、彼ら(中国)の世界制覇のシナリオを挫くことに成功したのです」

「トランプ氏に勝ってほしい。その方が国家のためになると思います」

ポンペオ自身から、次の次の大統領を狙う野心の言葉も引き出している。

「人生は何が起こるか分かりません。一体誰が大統領になり、さらに四年後にはどんな人生が待っているのか、自分でも見てみたいくらいです」

古き良き「反戦平和」

文芸春秋の名誉のために書いておくと、同誌がこれで風見鶏よろしく左から右へUターンしたわけではない。このインタビュー記事もあくまで「日本地図から『新しい戦前』を考える」という特集の一環である。「新しい戦前」とは、言うまでもなく、防衛力強化を打ち出した今の日本を批判しようという左路線が好む反軍事、反戦平和の流行語。この特集名も極端に言えば、「安心してください、左翼ですよ」という注意書きかもしれない。ならばトランプ支持の記事など載せなければいいと思うかもしれないが、雑誌は売れなければ生きていけない。人はパンのみにて生くるものにあらず、されど反戦平和の信仰のみでも生きることはできない。

一方で戦後、反戦平和の全盛時代に論壇の権威だった「世界」は、そんな時代が終わっても、ぶれない。表紙は「トランプふたたび」「極端化と幻滅の果て」とトランプ批判。もちろんだからといって左翼、反戦平和とはかぎらない。保守にもトランプ批判は大いにある。ただ、ほかの特集も「人権を取り戻す」など、古き良き世界の権威が守られたものであった。世界は最近、表紙などでイメージチェンジしているが、編集長の堀由貴子は「中央公論」に登場して、世界の「立ち位置」についてこう答えていた。

「『平和のための言葉』といえばいいでしょうか、戦争の過ちを繰り返さないということと、人間の尊厳を基盤にするということですかね」

すばらしい旧態依然である。

「しょぼい事件」で大騒ぎ

ここで言う「旧態依然」はもちろん皮肉だが、ただし、旧態にもいいところがあるなら守らなければならないし、たとえ悪があっても、その半面のいいところを守るため悪にたえなければならないときがある。評論家の福田恆存は「美徳の旗の下に必ず蛆が湧く」と書き、悪にたえられない知識人を批判した。

 

自民党の派閥裏金事件の後、マスコミでは安易な旧態批判が幅を利かし、東京地検特捜部の捜査に便乗した政治刷新論や派閥解体論が花盛りだが、民衆が利益を追い求め政治参加する民主主義の政治がきれいごとだけで回るはずがない。そこをどう考えるかが論壇である。中央公論でジャーナリストの田原総一朗が苦言を呈していた。

「裏金はとにかく悪なんだってマスコミは言うけど、自民党の議員たちはちっともそう思っていない。彼らにとって交際費は有力企業や地元の有力者から要望を聞くための必要経費で、そんなに安い店に行くわけにはいかない事情もある。…なかなか大変だよね」

主語を「議員たちは」ではなく、「私は…そう思っていない」としていれば、なお勇気ある言葉だった。

この事件は「第二のリクルート事件」などと騒がれたが、法政大教授の山口二郎は同誌の対談で「三十数年前のリクルート事件東京佐川急便事件と比べるとだいぶしょぼい」。「Voice」では中央大教授の中北浩爾が「みすぼらしい事件」と書いた。中北は「派閥を問題視するのは論点のすり替え」と派閥解体論を批判していた。

一方で、同じVoiceでも元首相の野田佳彦は「政治家とは本来、お金をかけずにいかに活動するかを考えるべき」と建前論。政治活動のビラ配布はボランティアが手伝ってくれるし、人件費の心配はないのだという。野田の選挙区は知らないが、多くの選挙では企業や労働組合の職員が給料をもらってアルバイトで「選挙ボランティア」をしていることなど、選挙取材をかじった記者ならたいてい知っている。こんなものは政治家のきれいごととしてはいいが、論壇の名には値しない。

WiLL」は今回、イスラム思想研究者、飯山陽の対談を巻頭特集にして売れたそうだが、飯山が日本保守党から衆院補選に立候補するというニュースには驚いた。近年、保守論壇のスターになりつつあった飯山には、どこかの元首相のようにきれいごとばかり語る政治家にはなってほしくないものだ。(敬称略)