「非暴力を用いることだけが、真の民主主義にいたる道なのです」。インド独立の父、ガンジーの言葉だ。彼が「非暴力・不服従」という社会運動の手法に到達する原点は、弁護士として赴いた南アフリカでの体験にある
▲1等切符で地方へ向かう道中、白人の乗客から「貨物車へ移れ」と言われ、抗議するとホームに放り出された。大英帝国の支配下、出稼ぎのインド人労働者たちが置かれた過酷な現実を、23歳の青年は身をもって知った
▲1年契約の滞在は目的を変えて20年以上に及んだ。45歳でインドに戻り、祖国の独立を勝ち取る指導者となった後半生は数々の伝記に詳しいが、あれほどの偉人がノーベル平和賞を受けていないと聞けば意外に思われるだろう
▲実は1937年から計5回、ノミネートされている。インド独立直後に行われた47年秋の選考では、委員5人のうち3人が反対した。当時、宗教を異にするパキスタンが分離独立したことが新たな紛争を招き、多くの犠牲を生んでいたからだ
▲民族の融和を祈り続けたガンジーは翌48年1月、暗殺された。5度目の推薦も「死者には贈らない」とのルールが適用された。ノルウェーの平和賞委員会はその年の授賞者を「該当なし」とすることで報いた
▲きょうは国際非暴力デー。マハトマ(偉大な魂)と呼ばれるガンジーの誕生日にちなんで制定された。ノーベル賞も今週、相次いで発表される。人類の幸福のために努力を重ね、貢献した人々の営みに光が当たる1週間だ。