徒然なる儘に ・・・ ⑤

心機一転、新たにブログ再開です💕 雑談を書くことも多いですけれど・・・(主に、電子ゲーム・ネタ💕)、残りは【新聞記事】にコメントを入れています💕

【産経抄】産経抄 「秋刀魚笑う」の豊かな海を 2023/9/22 05:00

漁港に水揚げされたサンマ=日夜、北海道厚岸町

山には季節ごとの顔がある。春は「山笑う」、夏は「山滴る」、冬は「山眠る」。山の四季はかく描くべし―。郭熙という中国・北宋山水画が残した教えである。日本では季語として知られている。秋は「山粧(よそお)う」という。

▼海に「笑う」や「粧う」の表現があるのか寡聞にして知らない。海の四季に敏感なのは、目よりも舌の方だろう。<全長に回りたる火の秋刀魚(さんま)かな鷹羽狩行。味覚に加えて、目耳鼻をも喜ばせる名句である。秋を告げる海の使者を、食卓に迎えたご家庭は多いかもしれない。

▼わが家でもつい先日、脂の乗ったサンマを大根おろしスダチでおいしく頂いた。「北海道産など1尾38」。新聞の折り込み広告を見た家人が、慌てて近所のスーパーに駆け込んだところ、残りわずかだったという。遠いところをようこそ。

▼近年の不漁は今季も続くようで、漁場にやって来るサンマの量は低水準となる見通しだという。北海道・根室では、先月半ばの初水揚げで史上最高となる1キロ当たり14万円あまりの値がついたと聞く。かつては庶民の味、いまや「高級魚」である。

▼当方がお目にかかったサンマは破格の安値かもしれない。旬の味を乗せた舌はさらに欲が深くなる。食後に残ったのは、満足感でなく口ざみしさだった。「秋刀魚も人間も秋という舞台に立って、心にしみる味覚となるのである」。大正生まれの俳人楠本憲吉はそう賛美した。

▼ぜいたくな句を詠んでいる。<秋刀魚食って胸焦(や)け辛(つら)き誕生日>。胸やけの後に待つのは「腹笑う」か「腹眠る」か。現代の食卓からは想像もつかない。多くの先人が詩や句に想を練ったサンマは立派な文化である。「秋刀魚笑う」の豊かな海を、守らねば。