徒然なる儘に ・・・ ⑤

心機一転、新たにブログ再開です💕 雑談を書くことも多いですけれど・・・(主に、電子ゲーム・ネタ💕)、残りは【新聞記事】にコメントを入れています💕

(天声人語)気づかぬふりをする 2024年5月29日 5時00分

程度の差こそあれ、私たちはみな、他人の痛みに気づかぬふりをして生きているのかもしれない。公開中の「関心領域」を観(み)て、急に怖くなった。アウシュビッツ収容所の所長だったルドルフ・ヘスの一家を描いたホロコースト映画だが、ユダヤ人虐殺のシーンは一切ない

happinet-phantom.com

ルドルフ・ヘスは何をした?
 
ルドルフ=ヘスはヒトラーの腹心としてナチ党の副総統を務め、ナチス=ドイツの中枢にいたが、1941年、独ソ戦開戦直前に、単独でイギリスに飛行し、和平を図ろうとした。 イギリス当局に捕らえられ、戦後は戦犯として40年以上にわたり拘束されたが、その真相は不明である。

 

 

 

 

▼第2次世界大戦中、ナチス軍は収容所一帯を「関心領域」と呼んだ。プールや花壇を備えたヘスの邸宅は、域内どころか収容所とは壁を隔てた隣にあった。向こう側の煙突から黒煙が上るのが見え、悲鳴や銃声が聞こえる

 

 

 

▼それでも一家は何事も起きていないかのように暮らす。囚人のものだった毛皮のコートを着て、ポケットに入っていた口紅までつける妻。金歯を集めて喜ぶ子どもたち。その無自覚さに「この人たちは怪物だ」と思いそうになる

 

 

▼だが、ユダヤ系英国人のジョナサン・グレイザー監督は「普通の人間として描きたかった」と語っている。彼らは異常だからできた。私たちは普通なので、あれほどの惨事はもう二度と起きない。そう考えるのは間違いだと

 

 

 

ヘスは敗戦後に捕まり、絞首刑となった。手記に所長時代の心境を書き残している。「ガス室や、火葬に立ち会っていると、しきりに妻や子供たちのことが思い出されてくるのだが、それが、眼前の光景にどうしても結びつかないのだ」

 

 

▼壁の向こうに関心を持たない。叫びを聞き流す。何も考えない。どれも日常的にやっていそうだ。だが、壁はいつでも崩壊する。警告された気がする。