「ロシアはファシズムの国になりつつある」。
「プーチン大統領は同胞たちによそ者を憎むようにプログラムした」
「彼はウクライナを放っておかないだろう」。
ロシアの行く末を危ぶんだのはリベラル派の野党指導者、ネムツォフ元副首相だ
▲2015年2月末の米ニューズウィーク誌とのインタビュー。前年のクリミア併合やウクライナ東部への軍事介入の動きを批判し、大規模な反戦集会を予定していた。モスクワ中心部で銃撃を受け暗殺されたのは会見の数時間後だった
▲「実行犯」が逮捕されたものの、今も政権の関与を疑う声が根強い。例年、命日を前に支持者らが犯行現場の橋に置かれた記念碑前に献花に訪れる。ところが先週末、花束が撤去された
▲かつて反政府集会で肩を並べた反体制派指導者のナワリヌイ氏が獄中死したためだ。まもなくウクライナ侵攻から2年。来月は大統領選だ。当局は死者への哀悼が政権批判につながることを警戒している
▲メディア統制や政治弾圧で表面上は圧倒的支持を得る最高指導者も古希を過ぎた。心の奥底には恐れがあるのかもしれない。ネムツォフ氏もナワリヌイ氏も若々しくスマートで大衆的人気が高かった
▲ナワリヌイ氏がドローンで撮影した「プーチン宮殿」の全貌を世界に発信したことにも肝をつぶしたろう。「政権が敵対者を排除するのは弱く、公正な競争ができないためだ」。ネムツォフ氏を記念する財団がナワリヌイ氏への追悼声明で指摘したプーチン氏の「実像」である。