徒然なる儘に ・・・ ⑤

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<正論>日米同盟の防衛力運用の在り方  拓殖大学顧問・森本敏

拓殖大学顧問の森本敏

現在、安全保障関連3文書に基づいて防衛力整備が具体的に進められている。当面は、推定される台湾危機までに計画された防衛力整備を間に合わせることが求められる。今後の課題は、わが国の防衛力が日米同盟の下でより強力にその実力を発揮するために日米両国は何をすべきかということにあろう。

危機対応は日本単独ではない

昨年7月までに3年連続で日本戦略研究フォーラムが主催して行われた台湾海峡危機政策シミュレーションは、日本の防衛力を台湾危機時に運用する際、どのような問題があるかを検証するものとして成果があった。シミュレーションには与党議員、政府OB並びに米国、台湾から多数が参加し、台湾危機に際してどのようなことができ、どのような問題があるかを認識したに違いない。

しかし、このシミュレーションは日米同盟に基づく活動がどこまで反映されているか疑問である。わが国が台湾危機に際して単独で行動し事態に対応できるはずもなく、また、そのような法体系にもなっていない。平和安保法制は重要影響事態、存立危機事態、武力攻撃事態という事態認定を閣議並びに国会審議を通じて行い、これに基づいて活動できる要件と範囲が決まり、首相が自衛隊を指揮監督できる体制になっている。

また、このことが国民にも広報される。問題はその際、米国がどのような事態を想定し、部隊にはどのような命令が発令され、また運用されるかである。台湾危機に際し、わが国の防衛力は米国と独立して活動できるわけではなく、かつ、米国の要請に応じて必要な行動をとらざるを得ないことも明白である。

日米防衛協力ガイドラインでは、そのために日本側と米側が相互調整や情報交換などを行うACM(同盟調整メカニズム)として、ACG(同盟調整グループ)、BOCC(共同運用調整所)が編成され、これに基づいて日米の共同運用要領が決められる。

いかに緊密連携できるか

米軍は大統領の命令に基づき、国防長官、統参議長を通じて米軍(インド太平洋軍のような地域軍、あるいは戦略軍、空輸軍、宇宙軍のような機能軍)に指令が出され、インド太平洋地域ではインド太平洋軍司令官がほぼ全権を与えられて部隊に命令を下すのであり、事態認定という制度はない。

この場合、米軍がどのような状況にあり、どのような要請を同盟国である日本に行ってくるかが、2025年春に新設される統合司令官にとって行動の基準になる。

このシミュレーションは教訓としてわが国が武力攻撃や存立危機といった事態が想定される以前に予測事態を認定しなければ、所要の準備ができないことも指摘しているが、その場合、米国がどのような発令を行い、わが国にどのような要望がくるのかを想定せずにわが国の活動要領を決定しても、台湾危機事態に効果的に対応できない。

繰り返しになるが、台湾危機についてわが国は単独で行動できるわけではなく、米国の部隊行動とどのように協力するかが、対応策の中心軸になるべきである。

すなわち、わが国周辺で事態が予測される場合、最も重要なことは日米間で間断なく調整を行い、指揮統制系統を調整し、部隊の運用に隙間がないよういかに緊密に連携しながら行動するかである。

従って、今後、インド太平洋軍司令部と1年以内に新設される常設統合司令部(JOC)の間でいかなる指揮統制並びに調整を行うかということを十分に協議しなければ危機に対応することはできない。

連携は中国の抑止にも

その際、3つの点に留意する必要がある。

第1は、日本側がインド太平洋軍司令部のJ4(後方)か、J5(国際関係)の副部長に将補クラスの自衛官を常駐させて、インド太平洋軍司令部との連絡調整を円滑に行うことであり、その見返りにインド太平洋軍から少将クラスの高級スタッフを常設統合司令部に派遣してもらうことにより、日米相互の指揮統制上の意思疎通を十分に図ることである。

第2は、米国が在日米軍司令官(現在は在日米軍全体に対する指揮権がない)にインド太平洋軍司令官の権限の一部を委任することである。これは在日米軍との調整を円滑に行い、日米共同行動を進めるために不可欠である。

第3は、インド太平洋軍司令部と常設統合司令部の指揮統制及び調整に必要な通信システムを増設することによって、目標設定を確実に行うことができるようにすることである。

すなわち、わが国の防衛力整備、とりわけ、反撃力、統合ミサイル防衛、サイバー、ドローン、宇宙のシステムを最も効率的に運用するために日米がどのようなチャンネルを作り、事態認定をこれに対応させるかが、中国に対する抑止になるのである。中国に対する認知戦に対応するよりはるかにこの方が重要なテーマとなり得るであろう。(もりもと さとし)

 

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