「世論調査だけで政治が動いていいのか」。ミレニアム年の4月に倒れた小渕恵三氏の後を継いだ森喜朗元首相の言葉だ。「日本は天皇を中心とする神の国」という発言で支持率が急落し、衆院解散に打って出たものの自民党は単独過半数割れした
▲首相の座にとどまったが、汚職事件に絡んで党役員や閣僚の辞任が相次ぎ、支持率低迷が続いた。1桁台にまで下落すると、党内の「森降ろし」が表面化し、党総裁選を前倒しして在任1年で退陣した
▲そんな政治史の復習が必要になるような岸田文雄内閣の支持率急落ぶりである。小紙は過去最低の21％に。他メディアもそろって20％台を記録している
▲こんな時には森政権誕生にも一役買った青木幹雄元官房長官の考案という「青木の法則」が取り沙汰される。内閣支持率と自民党支持率の合計が50ポイントを割ると危険水域だそうだ。小紙調査では45ポイントにまで落ちた
▲支持率を左右する要素は内閣改造、スキャンダル、国会審議といわれる。支持回復を狙った9月の改造は、醜聞が浮上した政務官、副大臣の相次ぐ辞任で裏目に出た。補正予算審議で野党の攻勢が続けば、持ち直すのは簡単ではない
▲「私のことを『死に体』というが、ご覧の通り極めて健康体」「『もみ殻総理』というのは日本中のお百姓さんに失礼だ」。退陣直前に実質のない「もみ殻」扱いされた森元首相の「迷言」である。支持率は国民の満足度の指標だ。調査に文句をつけるよりも数字を直視して胸に手を当てた方がいい。
