アブラハムから数えて、42代目がイエス(Jesus) ですけれど。
スーパーコンピュータが叩き出した、万物の根源となる、数字とは❓
世界中のパソコン50万台をネットワークでつなぎ、スーパーコンピューターをも超える能力で計算させることで、未解明だった数学の難問を解決することに欧米の数学者が成功した。ある整数を3乗した数(立方数)を三つ、足したり引いたりして1~100を作る問題で、最後まで残っていた42となる三つの組み合わせが64年目にしてついに見つかった。
この問題は1950年代、英国の数学者ルイス・モーデルが考え出した。例えば、1の3乗+1の3乗+1の3乗は3になる。4、4、-5の組み合わせでもそれぞれ3乗して足すと、64+64-125となって合計は3になる。モーデルは論文で「この2通り以外に3をつくれる組み合わせがあるのか、私には分からない。見つけるのは非常に難しいに違いない」と記した。
55年には、3だけでなく、三つの数字を組み合わせて1~100の数をすべてつくれるか、という問題に発展した。整数論の重要な定理「モーデル予想」を提案した大数学者の問いかけとあって、世界中の数学者が色めき立って考え始めた。手計算で手に負えなくなると、コンピューターによって手当たり次第に探されるようになり、2016年までに33と42を除くすべての答えが出た。13や14のように、9で割って余りが4か5になる数には答えがないこともわかった。
そして今春、英ブリストル大のアンドリュー・ブッカー教授(整数論)が、大学のスーパーコンピューターで3週間計算して33の答えを出した。だが、42はさらに10倍以上の計算量が必要そうだと判明。そこで、世界中のボランティアのパソコンをつないで計算能力を飛躍的に高める「チャリティー・エンジン」という仕組みを利用することにした。
米MITのアンドリュー・サザーランド教授(計算数論)と協力し、数カ月かけて専用のプログラムを書いた。そして今年9月、50万台のパソコンに2日間計算させ、最後まで残っていた42の答えについに行き着いた。その答えは、次の17桁の三つだった。
-8京0538兆7388億1207万5974
8京0435兆7581億4581万7515
1京2602兆1232億9733万5631
ブッカーさんは「見つかるなんて思っていなかったので驚いた。地球規模に広げたコンピューターと効率的なプログラムのおかげだ」と語った。
さらにプログラムに改良を加え、究極の目標だった3通り目の3になる組み合わせ「モーデルの3」も探した。こちらはわずか7時間の計算で発見できたという。それは最大21桁の三つの数だった。
5垓(がい)6993京6821兆2219億6238万0720
-5垓6993京6821兆1135億6349万3509
-47京2715兆4934億5332万7032
ある問いに答えがあるのか、それともないのか。そんな問題は、代数学の父と呼ばれた古代ギリシャの数学者の名から「ディオファントス問題」と言われる。解決まで約350年かかった難問「フェルマーの最終定理」もその一つだった。サザーランドさんは「モーデルの最初の疑問である3の新たな答えを示せて、とても満足だ」と語った。
これで100以下の数字をつくれる三つの数の組み合わせはすべて解けたが、1千以下ではまだ8個、未解決の数字があるという。さらに、そもそも答えは一つだけではなく、無数にあるはずだ。これらを見つけられる希望はあるのか。爆発的に増える計算量の中から、いかに不要な計算をせず、効率的に探索できるかがカギを握る。
「どこまで探索すれば答えが見つかるのか、正確に見積もることは誰にもできないし、結局、答えは見つからないかもしれない。試みは運次第だが、挑戦したい」とブッカーさんは話す。サザーランドさんも「今のところ答えはランダムに現れるように見えるが、すべてを統制する何かがあるはずだ。整数のその深遠な構造をのぞき見たい」と語った。
次の目標は114だという。(石倉徹也)