自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を巡って同党は4日、清和政策研究会(安倍派)や志帥会(二階派)の関係議員らを処分した。5日の小紙の関連記事を読んでいて、党重鎮がこう語っていたことが気になった。「(岸田文雄)首相は泣いて馬謖(ばしょく)を斬ればいい」
▼中国の三国時代、蜀の軍師だった諸葛孔明は配下の武将、馬謖が指揮に背いて魏に大敗した際に、軍法によって泣く泣く馬謖を斬った。その故事を引いた言葉だが、果たして首相は泣いていたのか。それとも目の上のたんこぶを取り除き、内心ほくそ笑んだのか。
▼安倍晋三元首相が存命中の令和4年5月の安倍派の政治資金パーティーでは、首相は自身が会長を務める宏池会(岸田派)と比べて安倍派の戦闘力の高さを称賛し、「引き続き岸田政権を支えていただくようお願い申し上げます」とへりくだっていた。今やその安倍派は跡形もない。
▼東京地検特捜部が他地検からも人を集め、100人規模体制で徹底的に捜査した結果、不起訴(嫌疑なし)となった安倍派幹部らを、世論の厳しい目を理由に離党勧告や党員資格停止で排除する。一方で、岸田派の元会計責任者が立件されたにもかかわらず、自身への処分はゼロとはいかに。
▼これには、党紀委員会内からもこんな声が聞こえる。「法的にシロとされた人間をクビにしたようなもの。禍根を残す」。処分が集中した安倍派中堅は言う。「党内はガタガタ。一度下野して出直した方がいいぐらいだ」
▼中国の戦国時代の思想家、韓非子は国を危うくする君主のやり方の2番目にこんな例を挙げている。
「法規をはみ出してその外でかってな裁断をくだすこと」。
首相は身に覚えがないだろうか。