徒然なる儘に ・・・ ⑤

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(8がけ社会)若者は割を食っているのか 社会保障に不公平感、デモ参加の20歳「負担だけ」 2024年5月4日 5時00分

 働き手が2040年にいまの8割になる「8がけ社会」では、介護などの分野で人手不足が深刻化し、サービスの低下が懸念されている。朝日新聞世論調査では給付と負担をめぐる若い世代と高齢世代の意識の差が見えてきた。この点に着目し、30歳の笹山大志記者と、57歳の浜田陽太郎記者がそれぞれの視点で取材した。「世代間格差」という切り口で、それぞれが見た風景はどう違い、どこで交わるのか。▼1面参照

 

 「世代間の不平等を促進する無駄だらけの社会保障制度は改革しろ」

 4月29日昼、JR京都駅前で全国から集まった約15人が声を張り上げた。20代~40代の医師や司法書士、中小企業役員など職種はバラバラだ。

 有志のグループ「次世代運動」は今年1月に結成。少子高齢化で医療や介護、年金などの社会保障費が増大し、現役世代の負担が増えることに不公平感を抱いている。

 グループを立ち上げたのは青森県フリーランスとして働く北村達哉さん(26)。政治経験のない一人の青年を突き動かしたのは日本の衰退を最前線で目の当たりにしてきた将来への危機感だ。

 青森県の人口1万人にも満たない過疎地域で生まれ育った。地元の高校を卒業、障害者の福祉施設で働いた。若い障害者が人手不足を理由に受け入れてもらえず、施設の利用を拒否される姿も目の当たりにしてきた。その一方で、一生懸命働いているはずの同僚が子どもを育てるには生活が苦しいと訴えていた。

 社会保障分野で不公平感を訴えるのは限られる日本の財源や人材が将来の世代のためではなく、高齢者ばかりに使われているとの考えからだ。

 2022年、JR盛岡駅前で一人デモを始めると、X(旧ツイッター)上で共感の声が寄せられ、今では寄付などの支援者が160人を超える。各地でデモや署名活動をし、社会保障分野での高齢者と現役世代の負担の是正を訴える。「今改革しないと、私たちの世代が子どもたちを搾取することになる」

 朝日新聞世論調査では、若い世代ほど介護サービスが低下してでも、負担増を避けたいといった傾向が見えてきた。ただ、いまは支え手の現役世代もいずれ自分の親や自身が介護を必要とする立場になる。それでも不公平感を訴えるのはなぜか。

 デモに参加していた大学生(20)は「将来、同等のサービスを受けられる可能性が低いのに負担だけ強いられるのは許せない」と言う。

 以前にもあった「世代間格差」への不満が再び顕在化している背景には何があるのか。

 世代間格差に詳しい法政大学の小黒一正教授は「最近までは政府の子育て政策、18歳選挙権導入などで若者の不満が収まっていたのでは」と指摘する。その一方で、医療や介護、年金制度の抜本的改革は先送りされ続けた。

 いま、物価高などで生活が苦しくなりはじめ、政策がうまくいっていないことに現役世代が気付き始めた。介護では、サービスを受けられる人が制限され、現役世代が負担してきた保険料に見合うほどのサービスを親世代が受けられていないことへの不満もみられるという。

 こうした現役世代の不満を放置すれば、怒りの矛先は高齢者に向き、世代間対立を生みかねない。小黒教授は「今すぐ受益と負担のバランスを是正する仕組みが必要だ」と訴える。(笹山大志)

 

 ■介護どう担う「全世代の課題に」

 「世代間格差」は過去にも論争があった。2005年度の経済財政白書では、政府からの負担と受益を世代別にみて、60歳以上の世帯は4875万円の黒字、20歳未満を含む将来世代は4585万円の赤字とする試算を掲載。「1億円の格差」として流布するようになった。12年にも内閣府の研究所が「社会保障を通じた世代間不均衡は無視できない大きさ」とする研究を公表した。

 ただ、世代間の公平性を示す指標は金銭的な負担だけではない。老親の扶養や自宅介護といった負担、子育て支援による受益など世代によって考慮すべき要素は異なる。

 厚生労働省は、特に40~64歳も保険料を負担する介護保険制度について、高齢者への給付というより、家族による介護負担が軽減される現役世代への給付と考えられるとして世代間格差の主張に「強い違和感」を表明した。

 介護と仕事の両立支援など企業の多様性推進に関するコンサルティング会社グループの社長で、経済産業省の検討会に参加した佐々木裕子さん(50)も、ごく最近、支援が必要な母親が1人暮らしする環境を整えて職場復帰し、現役世代への給付を実感した一人だ。

 「いまの要介護高齢者の子ども世代は、きょうだいが少なく、共働きのケースが多い。このため、自分たちだけでは受け止め切れず、孫による介護などヤングケアラーも含めた全世代的な課題になっていく」とみている。

 社会保障のための負担は経済の足かせで、現役世代にとってマイナスという見方は根強かったが、介護をしながら仕事をする「ビジネスケアラー」も今後、増えていくと見通されている。経産省は今年3月、両立支援に関する経営者向けのガイドラインを公表。「日本の介護保険は、世界的に見ても充実した制度」(担当者)とし、現役世代が働き続けるための介護給付と位置づけている。(浜田陽太郎)

 

 ■<視点>進む人口減、納得感ある負担を

 今回の記事は、還暦間近の私が、30歳近く若い笹山大志記者から「若者は割を食っているのではないか」と問われたことから始まった。人口減少や巨額の財政赤字を背景に、不公平論が広まる土壌はある。

 これから、お金では解決できない絶対的な人手不足の時代がくる。希少な若い世代の不安や不満に向き合う重要性は増している。介護保険がもたらす現役世代へのメリットなど社会保障の意義を理解してもらいつつ、税や保険料などについて年齢に関わらず支払い能力に応じた負担を求めるなど、若い世代の納得感が得られる改革が必要だ。高齢世代にも、社会保障が世代間の助け合いの制度であることを理解してもらう必要がある。

 年金を議論する厚生労働省社会保障審議会年金部会の委員を務める時事YouTuber・たかまつななさん(30)は、「すでに受給が始まっている年金を抑制する対策への風当たりは強いが、将来世代のために必要といえば、自分の孫のためなら仕方ないと思う高齢者も多いはず」と感じているという。

 次世代運動のサイトにある北村達哉さんのあいさつ文を読んで「(今年生まれる赤ちゃんたちが)今の僕のように、ほどほどに働き、休日は仲間たちとほどほどに楽しく過ごす…そんな日々を送れているでしょうか?」と問いかけた一節が目に留まった。運動の目標は「未来を生きる子どもたちに恥じない生き方をする」ことだというのだ。

 この目標については多くの人が賛同し、「8がけ社会」でも持続可能な制度にしていくための、未来に向けた対話の糸口になりそうだ。(浜田陽太郎)

 

 ■人手不足、将来の介護「心配」89% 本社世論調査

 朝日新聞社が「人手不足社会」などをテーマに実施した全国世論調査(郵送)で「介護」について質問したところ、人手不足により将来十分な介護を受けられない心配を感じる人が89%と圧倒的多数だった。人手を補う方策としては「介護職の給与を大幅に上げる」が56%と最も多かった。

 自分や家族が将来「人手不足により十分な介護を受けられなくなる心配」を尋ねると、「大いに感じる」が40%、「ある程度感じる」が49%に対し、「あまり感じない」9%、「全く感じない」1%と少数だった。

 介護の人手を補う方策は五つの選択肢から特にどれに力を入れるのがよいかを選んでもらった。「介護職の給与を大幅に上げる」に続いたのは、「家族による介護がしやすい仕組みの拡充」19%、「介護職の育成教育を進める」16%。「外国人の介護職を増やす」を挙げた人は4%にとどまった。

 介護職員の平均賃金は全産業平均を下回り、なり手不足の原因ともされる。調査結果からは世論も大幅改善を求めていることがうかがえる。

 一方、介護サービスの水準維持には保険料、利用料や税金などの負担増も見込まれる。今回の調査で「負担が増えても、介護サービスが減らないほうがよい」(負担増)か「介護サービスが減っても、負担が増えないほうがよい」(サービス減)かを尋ねたところ、「負担増」を選んだ人が56%と、「サービス減」33%を上回った。

 どの世代も「負担増」が上回ったが、若い世代ほど「サービス減」の割合が高まる。60代では「負担増」対「サービス減」が58%対29%なのに対し、18~29歳では49%対42%と差が縮まった。(渡辺康人)

 

 ◇2040年には、働き手の中心となる現役世代(生産年齢人口の15~64歳)が今の2割近くの1200万人減ると予測されています。縮む社会をどう乗り越えていけるのか。16年後に待ち受ける社会を朝日新聞は「8がけ社会」と名付け、報じていきます。